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眼瞼痙攣について

眼瞼けいれんについて

眼瞼けいれんとは脳からの情報伝達が不調のためにまぶたがきちんと開け閉めできなくなる病気と考えられていますが、詳しい原因はまだわかっていません。

「けいれん」という言葉からはまぶたがピクピクしている状態を連想しがちですが、このような症状はある程度、症状が重くなってから出現するものであり、初期には、まぶたの不快感、まぶしく感じる、まばたきが多くなる、目をつぶっているほうが楽、目が乾くなどの症状が出現します。またそれらの症状は通常、両眼に起こりますが、左右で程度に差がある場合もあります。そしてこのような症状はドライアイのものとよく似ているため、ドライアイと診断されたり、また精神的な病気を疑われることで眼科や精神科を転々とされるケースもみうけられます。症状の進行はそれほど早くありませんが、放っておいても自然に治ることは少なく、まぶたがしょっちゅう下がってくる感じがしたり、まったく目が開けられなくなってくると、日常生活の中でも特に移動に関係することに支障が生じてきます。たとえば車や自転車を運転中に事故をおこされたり、歩行中に人や物にぶつかる経験をされている方も少なくありません。

眼瞼けいれんは40歳以上で発症することが多く、女性患者が男性の約2倍といわれています。現在、日本では10万人以上の眼瞼けいれん患者がいるものと考えられていますが、把握されているのは10分の1程度で、多くの場合は先に述べましたドライアイや眼精疲労、自律神経失調症、更年期障害、神経症などとまちがわれたり、診断がつかないまま引きこもっている例が多くあると推定されています。

治療について

まだ根本的な治療法は確立されていませんが、症状を抑える方法としてボツリヌス療法、薬物内服療法、まぶたの手術があります。この中で現在ではボツリヌス療法が主流となっており、今回はこの治療について説明いたします。最近、ボツリヌス療法はしわ取りなどに使用されるため、美容業界での利用に関心が高まっており、「ボトックス」という言葉なら聞き覚えのある方が多いのかもしれません。日本では眼瞼けいれんの治療としては1997年にボツリヌス療法が行なえるようになりました。ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンを注射して、緊張している筋肉を麻痺させる方法で、眼瞼けいれんでは目のまわり(上まぶたと下まぶた)に6か所程度注射するのが一般的です。ボツリヌストキシンは天然のたんぱく質でできた毒素のことです。このことから最初は使用をためらう方もいらっしゃいますが、もちろん注射液の中にはボツリヌス菌は入っておらず、注射をした後に、その場所でボツリヌス菌が増えるなどということは決してありません。むしろ注射をした後の効果は劇的で、治療を受けられた患者様はまったく別の印象をもたれることが多いようです。ボツリヌス療法の効果についてはボツリヌストキシンの注射をした当日にはほとんど効果は現われず、通常は2~3日してから、徐々に効果が現われてきます。そしてその効果は数か月持続した後に消えていきます。そのため安定した治療効果を維持するために、効果がなくなったら、再度注射を行なうことになります。副作用としてはくすりが効きすぎることによって、まぶたが上がりすぎたり(兎眼(とがん)といいます)、逆にまぶたが下がりすぎたり(眼瞼下垂(がんけんかすい)といいます)することがありますが、ほとんどはボツリヌストキシンの効果が消失するとともになくなります。その他に笑った時の表情がぎこちなくなるというものもありますが、眼瞼けいれんのつらさを考えたときに、このボツリヌス療法の効果に対しては多くの患者様が満足され、よろこんでおられます。先にも述べましたように眼瞼けいれんはドライアイや精神的な病気と間違われていることも多く、また急に目を閉じたりするため、「わざとやっている」とか「仕事をさぼっているのではないか」などと言われることさえあるようです。眼瞼けいれんはまわりの人が見て、感じていること以上に、患者本人にとってみればはるかにつらく、苦しいものです。「最近まばたきの回数が増えた」、「テレビやパソコンがまぶしくて見づらい」、「自然に目が閉じてしまう」、「ドライアイの治療をしているのに、ぜんぜん良くならない」、「目がうっとうしく、ごろごろする」、「目を開いているのがつらい、閉じているほうが楽」などの症状が長引いている場合には、眼瞼けいれんの可能性がありますので、再度詳しく眼科で検査を受けられることをお勧めいたします。

痙攣治療前画像

痙攣治療前

痙攣治療後画像

痙攣治療後

眼瞼けいれんの診断に役立つまばたきのテスト

以下のことをやってみてください

軽瞬テスト:まゆげの部分を動かさないで、軽い、歯切れの良いまばたきをゆっくりしてみる。
リズムよくできた?
速瞬テスト:できるだけ早くて軽いまばたきを10秒間してみる。
10秒間に30回以上のかるいまばたきがほぼリズムよくできた?
強瞬テスト:強く目を閉じ、すばやく目を開ける動作を10回してみる。
うまくできた?

3つのテストのうち、1でもできなかった場合は眼瞼けいれんの可能性があります。

2009年6月19日 奈良日日新聞掲載分