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緑内障と風邪薬

最近、緑内障患者様からだけでなく、薬剤師さんや他科の先生から緑内障の目薬をさされている患者様に胃腸薬や風邪薬を処方したいのですが、緑内障には使用禁忌あるいは使用注意となっていますので、このような薬は使えませんか?というお問い合わせが多くなってきました。それだけ緑内障という病気がよく知られるようになってきたせいなのかもしれませんが、わたしなりの意見を述べさせていただきます。

これらの薬剤が問題となっているのは抗コリン作用という瞳を少し広げる成分と眼圧を多少なりとも上げる成分が含まれているためです。緑内障にはいくつかのタイプがあって、確かに閉塞隅角緑内障とよばれるタイプのものでは瞳が開くと房水(目の中には血液のかわりとなって栄養を運ぶ、房水(ぼうすい)と呼ばれる液体が流れています。) の出口が閉じて、ひどい場合には急性緑内障発作とよばれる状態を引き起こす可能性があります。しかしこのようなタイプの緑内障であってもレーザー治療などにより茶目(虹彩)に穴があけられる処置が施されていれば、特に問題はありませんし、また他のタイプの緑内障でも眼圧を上げる作用については一時的であり、大きく上がることはないため定期的な眼科通院がなされていれば問題はないと思います。

以前に行なわれた大規模な調査では この閉塞隅角緑内障とよばれるタイプの有病率(40歳以上)は0.6%であり、緑内障全体の約10%程度であったということ、また一般人口のうち狭隅角眼(急性緑内障発作を起こす可能性がある眼のことです)の占める割合は加齢とともに増加はしますが、60歳以上でも1.2%程度と報告されています。しかし実際には狭隅角眼かどうかの判断は眼科医にしかできませんし、かといって風邪薬を飲む方全員に眼科受診してもらうことは現実的ではありません。

このようなことを考えますと抗コリン作用や交感神経刺激作用(これも瞳孔を広げる作用をもっています)を持つ薬剤の使用に関しては、急性緑内障発作が生じる可能性を常に頭に入れておく必要はありますが、狭隅角眼の割合はそれほど多いものではないですし、さらに狭隅角眼のすべてに急性緑内障発作が生じるわけではないので、大多数の人はまず問題がないことを伝えておいたうえで、目のかすみが強く、目の奥が痛くなったり、 吐き気などが生じてきたとき(急性緑内障発作の症状です)には我慢せず、すぐに眼科医の診察を受けるように指導することが大切と考えます。

2009年 第42回日本薬剤師会学術大会ランチョンセミナー発表分を一部改変して掲載しています。